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細胞膜の過剰な生産により誘導される原始的な細胞分裂

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  細胞膜の過剰な生産により誘導される原始的な細胞分裂 川合 良和 (英国Newcastle大学Medical School,The Centre for Bacterial Cell Biology) email: 川合良和 DOI:  10.7875/first.author.2013.028 Excess membrane synthesis drives a primitive mode of cell proliferation. Romain Mercier, Yoshikazu Kawai, Jeff Errington Cell ,  152 , 997-1007 (2013) 要 約  細胞壁は細菌の特色を示す構造であり,細胞の形態そして細胞分裂および増殖を維持するため必要不可欠な役割を担う.しかしながら,多くの細菌は細胞壁を失ってもL型とよばれる状態へと変化することにより分裂し増殖しつづけることができる.L型では細菌の細胞分裂において必須であるFtsZシステムを必要とせず,細胞がチューブ状に変形,あるいは,細胞の表面に複数の突起を形成し突出と退縮をくり返すなど,形態の変化に依存して分裂する.しかしながら,これまでその分子機構は不明であった.筆者らは,枯草菌においてL型の形態変化および細胞分裂を誘導するために,細胞膜の過剰な生産をもたらす遺伝的な変異が必要かつ十分であることを見い出した.さらには,変異をもたない野生株のプロトプラストでも,人為的に細胞膜の表面積を増大させるだけでL型と同様な形態変化と細胞分裂が誘導されることを示した.これらの結果は,細菌が細胞壁を獲得する以前の細胞,すなわち,高度な制御系をもたない原始的な生命体においても,同様な方法を用いて効率的に増殖することが可能であったことを示唆した. はじめに  細菌のもつペプチドグリカンをおもな成分とする細胞壁は,細菌の特色を示す構造である.細胞壁がほぼすべての細菌に存在していることは,30億年以上まえに誕生した細菌の共通祖先にもすでに細胞壁が備わっていた可能性を示す 1) .細胞壁の前躯体の合成およびその構築には多数の遺伝子を必要とするが,それらのほとんどは細胞の増殖に必須である.そのため,細胞壁合成系は抗生物質にとり有効な標的となっている.しかしながら驚くべき...